人間が感じることのできる最大級の激痛(仮)で搬送された日記
シルバーウィークの二日目、昼まで惰眠を貪るつもりで決めた二度寝、奴は来た。
09:30 違和感
悲しいほどに社畜なので、どれほど寝坊しても会議が始まる時間には必ず目が覚める。
休みなのに。せっかくの 5 連休なのに。とても悲しい。起きたからにはトイレでも … と、腹の上の猫をどかして用を足し、戻る。
もともと腰痛気味ではあるのだが、普段とは違う妙な痛みを感じる。
猫が変なところに乗っていたか … それにしては筋肉系の鈍痛ではなく、神経系の鋭い痛みな気がする … 違和感を覚えつつ再度お布団へイン。もう一匹の猫が「ンン〜〜」と甘えて潜り込んできたので、「よ〜しよしよしよしよし」とムツゴロウさんになりながら二度寝と洒落込む。
10:30 地獄の襲来
「おかしい。痛い。」
腰と思わせて左下腹部の異様な痛み。
徐々に明確な輪郭を伴いズキズキと主張してくる。左を下にして寝すぎたか?でも猫がこちら側にいるからなあ。仕方ないよなあ(ふわふわ)。
「いや無理、痛い。」
すぐに神妙な面持ちになり上半身を起こす。猫のふわふわでも誤魔化せない強めの痛み。いつもと違う雰囲気を察した猫がいそいそとお布団から去って行った。お前、さっきまであんなにゴロついていたくせに、ムツゴロウさんに向かってなんだその態度は。
そしてものの数分で、本当に、5 分も経たぬ間に、とつぜん奴はやってきた。
結構ガチ目に声が出た、何だこれ何だこれ。
不意打ちで内臓を鷲掴みに握り潰されたような激痛。
地獄ってこちらから向かうのではなく、こんなに積極的に擦り寄って来るものなのか。
「来ちゃった♡」みたいなノリの地獄のドカ激痛に、何かが刺さったか!?外傷!?いや内臓?内臓だよな?と大混乱し、這いずり回りながらひとまず最も近くにいたヒト科を叩き起こす(この家にはヒト科が 5 匹とネコ科が 2 匹いる)。
「腹、腹が痛い。めっちゃ痛い。やばい。7110 してほしい」
そんなものはない。
突然の地獄襲来でパニックになったわたしは ♯7119 すらまともに言えなくなっていた。
救急安心センター事業♯7119 は、住民が急な病気やケガをしたときに、「救急車を呼んだほうがいいのか」、「今すぐ病院に行ったほうがいいのか」など判断に迷った際の相談窓口として、医師・看護師・救急救命士から電話でアドバイスを受けることができる仕組みです。
住民から受けた相談内容をもとに、応急手当の方法についての助言や適切な受診医療機関の案内を行うほか、緊急性が高いと判断した場合は、119 番通報への転送やかけ直しを要請する等、相談者の状況に応じた対応を行っています。
では警察版で ♯7110 があるのかと思わせてそんなものはない(二度目)。警察版は ♯9110 である。何故そこを変えたんだ。地獄に擦り寄られている人間は、そんな前髪をちょっと切りました程度の変化には気付けないぞ。
基本的に薄情でのんきなヒト科は「あ?」などと寝ぼけつつピポパ … をし始める。
「かからない」
かかるだろ!!と大声を出しかけた。
どうも混み合っており通話中になってしまうようだ。寝転がったままピポパ … を繰り返す薄情なヒト科。痛みの限界を迎えたほうのヒト科は、ネコ科用の桶へオロロと嘔吐していた。
無能にも同じ手を繰り返すヒト科に「こっち!!」と短縮ダイヤルではなく 045(横浜市外局番)の番号を表示させたスマホを叩きつける。と言うか検索した端末でそのままかけたほうが早かったな、スマホを SNS 専用端末と勘違いしているインターネット廃人は本来の通話機能を失念していた。
「あ。もしもし」
繋がったらしい … ホッとしたのも束の間、「あ … 救急車 …… そうですか」と秒で話がついたことをうかがわせる絶望の相槌。もう一度オロロをやり布団から這い出る。
「これたぶん今日は帰られへんな」
10:50 救急要請
根城にしている二階の部屋からほとんど転がり落ちるように、一階の玄関へ向かう。
築 60 年ボロ屋の急階段、どうぞ踏み外してくださいと言わんばかりの急勾配をこの時ばかりは本気で恨んだ。
「出かけるの?」
たくさんいるヒト科のうち最も薄情ではない個体が声をかけてくれる。
「腹が痛いので救急車を呼びました、行ってきます」
「はい?」
間抜けな会話だとは思いつつも事実以外を述べる余裕が無い。靴を履いたあたりで、再びやばめの地獄がずずずいっと擦り寄ってきた。イメージとしては暗闇から迫り来るどでかい般若面だ。
「いいいいい゙ …… 」
うずくまるわたくし。
どん引きつつも救急隊員を迎えに出てくれる薄情ではないヒト科。
この個体は薄情ではないが時々よくわからないコミュニケーション齟齬を引き起こす。
外の救急隊員へ「動悸?え?何が?」とか聞き返しているのが聞こえた。隊員が聞いているのは「患者と同居しているか?」だと思うぞ。
ガララと開いた玄関戸の向こうには 3 人の救急隊員、そして台風 25 号に伴う暴風雨。幼稚園の卒園式に始まり、これまであらゆる人生イベントを雨風台風へと変換し尽くしてきた己の雨ジェンダーぶりにいたく感激した。
「では担架へ乗ってください。靴のままでいいですよ。」と、どうぞされるも既に自力で歩ける状態ではない。しかしストレッチャーの表面はどんどん雨に濡れていく。早く行かなくてはびしょ濡れ搬送だ。妙なところで潔癖なわたしは、ずり … と風呂場のナメクジの速度で移動した。この家にはヒト科が 5 匹とネコ科が 2 匹、そして風呂場に無数のナメクジがいる。
そう言えば最近、「救急隊員が家へ上がる際に脱ぐ靴の配置は並び替えないで」というツイートがバズっていたなあ … あれの本物を見たかったなあ … と明後日なことを考えつつ、へっぴり腰で何とかストレッチャーへ這い上がった。ちなみに、自宅から救急搬送される際に忘れがちなもの個人的第 1 位は靴である。
仰向けになるとストレッチャーごとビニール製のレインカバーへ包まれた。顔の部分だけが透明な窓になっており、とんでもない雨量が降り注いでいる。
11:00 救急搬送
救急車へ積み込まれると、サチュレーションや心電計など、車載モニターから伸びる様々なセンサーが取り付けられ、体温計を挟まれる。後から薄情なほうのヒト科が乗り込んでくるのが見え、既にだいぶ朦朧としていたわたしは「へ〜来てくれるんだ、ありがたいね」と謎の感謝を抱いていた。
「意識の確認です。お名前は言えますか?生年月日は?今日は何月何日ですか?」と矢継ぎ早に質問が飛ぶ。
さすがに己の個人情報は答えらえるが、今日が何月何日かなんてわからない。だって連休ですよ、すべてを忘れて昼まで寝ていられる日だったんですよ、ああそんな日に迅速に駆けつけてくれたんだ、救急隊員の皆さま、本当にありがとう。仕事の次回リリース日なら言えます。2026年10月20日の午後22時です。
取っ散らかる思考の中「18 … 19日かな … 9月の … 」と必死に絞り出した日付を「うん9月20日ですね〜」と朗らかに否定され、体温計が外される。熱は全くなし。血中酸素飽和度も心電図も問題なし。微熱すら無いなら虫垂炎ではないか … と言うか盲腸なら右側か。いま般若に握り潰されているのは左側なので、原因の推測がまったくできない。
朗らか救急隊員と薄情ヒト科がやり取りをし、搬送先の手配が進んでいく。あちらこちらへ電話する声は聞こえるが、その頃には般若の握力は更に増し、おとなしく寝ていられる状況ではなくなっていた。「ううう」とうめきながら足をジタバタさせると、クールめな救急隊員がベルトを締めてくる。もう亀甲縛りでも何でもいいからはやく、早く運んでください死ぬ。脂汗が止まらなくなってきた。再度襲ってきた痛みからの吐き気に上体を起こす。
「では行きますね〜20分くらいです」と、朗らか隊員が席を移動し、ようやく救急車が走り出した。
今どきの救急車って防音しっかりしてるんだな … 昔は爆音サイレンが車内まで響き会話もままらなかった気がする … いや今の自分が意識不明瞭で耳が遠いのか?シーソーシーソー … ト長調の分散和音 … など本当にどうでもいいことばかり頭へ浮かぶ。
そしてサスペンションが硬い。とんでもなく硬い。低重心の超重量機材車なので当然なのだが初代 P10 プリメーラくらい足が硬い。あの車にコントラバスが載るなら欲しかったんだけどな。救急車ならたくさん載るな、コントラバス。(参照:コントラバスが乗る車)
クールめ隊員から渡されたうがい受け(嘔吐用)をふにゃふにゃの両手でなんとか支えながら、オロロと痛みからのジタバタを繰り返す。靴はいつの間にか脱がされていたが、下手に上体を起こしたせいで足元の泥汚れが見えた。
「……。」
ここでも変な潔癖を発揮したわたしは、泥へ触れないよう身体をひねってジタバタする。足元ご配慮ジタバタ。変な角度なので毛布がずり落ちてしまい申し訳ない。
10分も走った頃にはもう痛みを逃がすこともできず、座り姿勢のストレッチャーで天を仰ぐ。
朗らか隊員から「ハッハッと呼吸すると手足痺れちゃうからね、ゆっくり深呼吸してね」と声をかけられるも、既に呼吸自体が怪しい。いっそ意識ごと無くなってくれないか … などと周囲の対応を無に帰すようなことを思い始める。
ついでに、薄情ヒト科が「脂汗すごいねえ」と言っているのが聞こえたがあんまりな声かけなので無視した。こんな時に間を持たせようとしなくていい。
11:30 病院
病院へ着くと雨はかろうじて降り止んでおり、上体を起こしたオロロ姿勢のまま運び出される。ヒト科がシートベルトを締めたまま立ち上がろうとするのが見えたので「シートベルト … 」とくっそ情けない声で指摘した。
このヒト科は自分が運転した車から降りるときもエンジン・ワイパー・ライトすべてを止め忘れ、シートベルトを外し忘れたまま降りようとするのだ。ボーっと生きてんじゃねーよ。
一方わたしは病院入り口でギョッとした様子の通行人と目が合ったのでとりあえず会釈しておいた。通行人にまでご配慮してどうする。
病院では看護師たちが車椅子で待ち構えており「歩かせた?」「どれくらい?担架まで?」と救急隊員へ確認している。まともに歩けなかったんです〜もう無理なんです〜動けないです〜と看護師へ目で訴えるも「じゃあご自分で車椅子へ移ってください」と無慈悲な指示を受ける。さっきの確認は何だったんだ。
看護師に手伝われ、生まれたての子鹿ばりにガクブルしながら車椅子へ崩れ落ちると、地獄の業火をまとった般若が両手で雑巾絞りをかましてきたかのような、最大級の激痛に襲われた。
俺の内臓ーっ!!!!と言葉にならない声が出る前に、あまりの激痛で「オエーッ」と盛大に吐く。後生大事に抱え込んでいた救急車のうがい受けを手放せない。看護師がビニール袋を構えてくれているが、あまりに絶え間なく吐くので交換できず、しばらく正面玄関へ 7〜8 人が固まることになる。
早くこのうがい受けを救急車へ返して引き継ぎたいんだろうな … ここたぶん普通に玄関併用の搬入口だもんな … あ、日曜で外来がいないからか … え?日曜?これ医療費いくらになるんだ?
救急隊員も手持ち無沙汰で、ヒト科もわたしの靴を手に「えー」という顔で棒立ちになっている。
一瞬の隙を見て看護師がサッとビニール袋とうがい受けを交換すると、ほな、みたいな軽い感じで救急隊員が戻っていった。本当にありがとうございます、命の恩人の皆さま(まだ助かってはいない)。礼を言えなかったのが心残りだ。カラカラと運ばれる後ろで、朗らか隊員が「書類のハンコだけもらえますか?」と病院へ聞いているのが聞こえた。救命救急の現場すらまだハンコ運用なのか本邦は。
11:50 診察と検査
検査室へ運び込まれるとニッコニコ顔の医師が登場した。
何故そんなに嬉しそうなのかはわからないが、とりあえず優しそうで良かった。過去、何度か運び込まれた別院では「これ今年の市内初インフルエンザじゃん!」とウキウキ小躍りで鼻へ綿棒を突っ込む医師や、「え〜〜… 痛がりすぎじゃないです?」と人の心とかないんか?な台詞を吐く医師など、割とマジでろくな人間に当たらなかった。
しかしそんな和やかな空気も「昨日の夕飯は何食べた?」の一言で一変する。
息も絶え絶えに「ブリの漬け丼 … 」と素直に答えると、サッと医師と看護師の顔色が変わるのがわかった。
「ブリ… 」と剣呑な声を出されたので、ハッと慌てて「あ、あと、豚バラのネギ塩炒めと … キャベツの味噌汁 … 」と付け足したがもはや相手にされず「ブリねえ、生だよね?」と確認される。あああ食中毒路線へ乗ってしまった。ここのところ「あすけん」でしっかり記録をとっていたのが災いして、普段なら覚えていない昨晩の飯を記憶していた自分を恨む。
違うんです、絶対に。そんな痛みじゃないんです。食中毒のときとは、吐き気の質も、痛みの度合いも、何もかもが違う!(ペリーのピアノ教室)
圧倒的な食中毒疑いのなか問診と検査が進む。
「そのブリ、いつのだった?」「古かったりする?」「漬けたのはいつ?」と怒涛の勢いで見知らぬブリの個人情報を聞かれまくるが、日付以上に答えようがない。自分で買ったわけではないし、漬けたのも別のヒト科だ。
しかし断続的な激痛に襲われているためまともに答えることはできず、こちらもこちらで意味不明な答弁を連発する。
医師と看護師の頭の上にどでかい「???」が浮かびまくる。
サミット圏外の人には何も伝わらない。何だよもぐもぐシールって。
もぐもぐシール賞味・消費期限が迫った商品に貼られているリスのイラストが描かれたシール。このシールを集めると寄付や抽選に参加することができる。食品ロスを減らすための取り組みとして全国のスーパーマーケットで導入されている。
リスの名前は「もぐにぃ」。
サミット主に首都圏でよく見かけるスーパーマーケットチェーン「サミットストア」のこと。
競合他社のマルエツに比べると品揃えはやや中途半端だが、特に総菜類が充実しており、揚げ物と店内で焼き上がるパンがとても美味しい。
12:30 入院
エレベーターを降りると、とんでもなく綺麗な個室へ通された。
個室!?
休日料金!?
風呂とトイレついてる!!
休日料金! ! ! !
銀行口座の残高が脳内を駆け巡るが、看護師は意に介さず、もぐもぐシール食中毒ニキ(仮診断)をベッドへ移す。「点滴入れるので外しますね〜」と Apple Watch を外されそのままガシャンと床へ落とされた。何してくれとんねん。
看護師から入院の説明を受け、薄情ヒト科が荷物を取りに一度帰宅する。往復してくれるんだ。自分の中でヒト科ランキングが微妙に更新され、相対的親切ヒト科へとランクアップした。
入れ替わるように、ニコニコの医師と看護師が現れ「血液検査の結果は〜異常なし!何もなし!炎症もなし!」と元気に発表される。
は?異常なし???
「え、炎症も?炎症もないんですか?」と思わず聞き返すが、本当に何も無いらしい。血圧はやや高いが、だいぶ吐いて痛がったのでそんなものだろうと。
わたしはもぐもぐシール食中毒ニキ(仮診断)から「ワンチャン仮病で搬送されニキ」へとランクダウンした。
15:30 何かを思い出す
病室で一人点滴を眺めるうち、尿意を催す。
これはどうすれば …?と、何やらピコピコ動いている点滴スタンドのあっちをツンツン、こっちをさわさわ。でもたぶんパーカッションの搬入出と同じだよな、こういうものは基本的に、一番太い支柱かハンドルっぽいところを持つんだ。吹奏楽コンクールの記憶が蘇る。
機械っぽいところを触らないよう、コードとチューブを手に持ち慎重に移動させる。トイレ付きの部屋で良かった。トイレも綺麗だな … 入院費いくらになるんだ。何をしても会計が頭をチラつく。チューブを引っ掛け「い゙ーっ!!」と痛みつつもなんとかお手洗いを済ませ、ベッドへ横になる。ふと気付いた。
あれ?痛くない。全く。
地獄の般若による内臓直絞りプレスから慢性的ズキズキへと移行した痛みは、気付けば完全に消えていた。
おやおやおや?まさか本当に仮病だったのか?気のせいだった?「検査結果は異常なし」を裏付けるような信じられない経過に、自分自身を疑い始める。いやまさか、あんな痛みは人生初だった、気のせいなわけはない。
己を正当化するため Google 検索と AI 検索を繰り返す。
「激痛 急に消えた」「下腹部 地獄の激痛」「なりやすい病気 中年 腹痛」… そんな中ひとつの結果が目に留まった。
尿管結石
この瞬間、電撃が走ったように「あ!!」と思い出した。
嚢胞・結石・PR 短縮
結石
会社の健康診断でしっかり指摘されていたのだ。
左腎 腎結石 5mm。
お、おまえ〜〜〜!
点滴に気を取られ、何も気にせずトイレを流してしまったのが悔やまれる。これだろどう考えても、という確信があった。
検索結果には「人間が感じることのできる最大級の激痛」「冷や汗や嘔吐を伴う悶絶する痛み」と、受け入れ難いワードがずらずら並ぶ。恐らくもう受け入れてしまったのだが。と言うかそうであってほしい。あれ以上の痛みがこの世にあり、人体へ許されているとは思いたくない。
前兆だったのか …?
ここ数日、背中から下に妙な違和感があった。医師へ「炎症すら無いのか?」と聞き返したのも、排尿時のかすかな違和感と言うか不快感が頭の片隅にあったからなのだ。
もう絶対これじゃん。たぶん。恐らく。そうであってくれ。
看護師が来たので、もしかしたら結石かもしれない、と伝えるも「ここでは泌尿器科の検査はできないので … 」と、とりつく島もない。あとサラッと翌日までの絶食と点滴の継続を伝えられた。嘘だろ … 腹減った … と言うか点滴が抜けないので風呂へも入れない。風呂つき個室なのに。
どうせ休日料金の個室になってしまったのならすべてを堪能してやる!と意気込んでいたが早々に打ち砕かれる。
その後はひたすらトイレとベッドを往復しつつ、持ってくる荷物を間違えた相対的親切ヒト科が若干ランキングを下げたり、フォロワーたちに励まされたり、各予定の土下座キャンセルなどの小イベントが発生した。
22:30 頃、やや仲良くなった点滴スタンドと共に眠りへついた。
09:00 退院
7:30 頃、廊下からのドンガラガッシャーン!!というえらい音で目が覚める。
ワゴンか何かを倒したのかグワングワン … と盆状のものが複数踊り狂う音が聞こえた。本当に大丈夫かこの病院。
「おはようございます」と、いまさら声を潜めた看護師が検査の準備をしに来た。
「吐き気はもう大丈夫ですか?」「お腹すきましたか?」などと聞かれたが、そこは普通「よく眠れましたか?」とかではないのか。
30 時間以上、水すら口にしていないので、もはや減ったとかのレベルではない。と言うか痛みではなく、吐き気の患者として認識されているのか。ナースステーション内では、まだもぐもぐシール食中毒ニキなんだ、と頭を抱えたくなった。
朝の検査もひと通り終わり点滴が抜かれ、一晩かけて仲良くなった点滴スタンドがカラカラと連れて行かれる。ありがとう点滴スタンド。出来ればもう会いたくはない。
荷物をまとめすることも無くなり、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』を観ていると、今日もニコニコな医師がやって来る。
「もう吐き気も無さそうだね、じゃ退院ということで」とやはり痛みではなく吐き気の確認をされ、20 秒ほどの診察で晴れて娑婆へと解き放たれた。
09:30 会計
最後の最後まで気は抜けない。
受付では「希望されて個室の場合は4万円、大部屋に空きが無く個室の場合は1万円」と明朗ではあるが目眩のする会計の説明を受ける。
あの部屋、1日で4万円もするらしい。今回は一晩を過ごしているため、2日換算で8万円になる。これから引越しも控えているので、さすがに泣けてしまう。
「ナースからは特に大部屋のご希望が無かったと伺っているのですが」と8万円コースで話が進み始めたので、さすがに「待って待って」と制止をかける。
「たしかに大部屋の希望はしていないですが、個室の希望もしていませんよ!?」と食い下がる。ここは食い下がらせてほしい。選択肢を示されなかったのは事実だ。風呂も使っていないしごはんも出ていない。ごはん …… お腹すいた ……
「ではお待ちください」と案外すんなり引き下がり、料金計算が始まる。
ドキドキだ、どうなるのだろう。
再度、呼び出されると ¥39,190 と微妙な金額が提示された。
診療費 ¥14,190
部屋代 ¥20,000
入院セット ¥5,000
う〜〜〜〜〜〜ん入院セット。
部屋代は無事に1万円のほうで計算されたようだ。だが入院セット。たしかに、歯ブラシ・コップ・スリッパ・清拭用ウェットティッシュなど、至れり尽くせりではあった。すべて買取りならコップと歯ブラシ持ってくれば良かったな、などとセコいことを考えつつ、まあ今回は、外来の受付も無い日の朝一に受け入れてもらった恩を金額で返そうと素直に払う。
誠意は言葉ではなく金額だ。by 福留孝介
10:30 退院後
ランキングを上げたり下げたり忙しいヒト科が迎えに来てくれたので、ほうほうの体で車へ乗り込む。
立派な二重窓の防音個室(!)では気付かなかったが、外は台風 25 号の暴風域へと突入し大変なことになっていた。
「ごはん … おなかすいた … 」とうわ言を繰り返すのを哀れんだのか、帰りがけにむさしの森珈琲へ寄ってくれる。ここ数年で最も気の利いた計らいかもしれない。相対的親切ヒト科から親切ヒト科へのランクアップを果たした。
34.5 時間ぶりの食事を涙ぐみながら完食し、ようやく今回の入院騒動は幕を閉じた。
今後
とは言え、今回は素人が勝手に「尿管結石だろう(そうであれ)」と希望的観測を抱いているだけで、確定診断は出ていない。少しでも下腹部に痛みがあるとビクッと怯えるほどにはトラウマになってしまった。
休み明けには改めて泌尿器科で検査をしようと思う。
追記
泌尿器科へ行ったらまだあと2個も石が残っていた …………

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